古布 木綿 野良着 紙縒り糸 麻糸 Noragi Koyori Hemp
2017年 05月 02日










以前にご紹介した庄内「紙縒り鎧下」の流れをくむ これは、「野良着」です。
江戸期は、紙縒りの「鎧下」としての需要から その存在が有りました。
時を経て近代では、野良着もしくは、特殊な祭礼・儀式用としての存在です。
江戸期から一足飛びに近代のこのアイテムとなったわけでなく、幾つかの段階を経ています。
これは、希少でほとんど現代では見ることが有りませんが、ここまでの変遷は幾つかのアイテムでたどることができます。ここには、木綿糸・麻糸そして紙縒り糸が交織されていますが、いかにも木綿糸の使い方は、そこに財力の余裕が見えます。木綿糸など使うこともできない場合は、その辺で調達が可能な麻が都合よくどこにでも自生していたようです。
ご存知のようにかの地は、江戸期から大変裕福な土地でした。その為 紙縒り糸を緯糸に使ったアイテムも藍に染められたアイテムを筆頭に数々あり、それらには、経糸にほとんどの場合木綿糸が使用されています。ふんだんに木綿糸を使用できる余裕がありました。紙縒り糸のみを緯糸に、経糸は木綿糸を このコンビの織布が藍のつけ染布で多くの形を持っていました。もっとも目にしたのは、やはり上質藍染木綿の野良着でした。それも袖のあるアイテムを多く見ました。
それらは、ほどよい作業で摩耗・傷ついた時 かの地では、その上に同様の布を継ぎ接ぎする機会は極めて少ないことでした。継ぎ接ぎされたアイテムの存在が希少であることからも 使用に難のある布は、解かれ次の使用布のパーツとなったようです。それがかの地の時間と財力の余裕を表していました。
近年までは、このタイプのアイテムもしばしば散見されましたが、いかんせん継ぎ接ぎ・擦れ味・襤褸という今はやりのコンセプトにはかなり及ばず 若干の擦れを持つ程度のアイテムでは、近年までほとんど顧みられることのない存在でした。しかし、製作当初より良き木綿、良き藍染料が使用されたアイテムだけに存在する 未使用アイテムの硬質感 そして美しく使用されたアイテムの現状には、きわめてFolkyな趣があり この江戸期から明治期にかけて手で紡がれた良き風合いの木綿と良質藍染料の結合には、他の地にない贅沢な日本染織アイテムの存在が有ります。
-----余談ですが良い藍染料の光沢感が素晴らしく発揮されるのは、良い麻繊維に染められた時もさらなる輝きを持ちます。その時代の良きアイテム・仕事の結晶です。
良き藍染め・良き風合いの木綿の結合は、良き仕事によって美しい使用痕跡が表現されました。全ては、当時そのシーンにいた人々によって生み出された良き仕事の最後の痕跡が今「美しい襤褸」と呼ばれています。------
その紙縒り藍染アイテムは、多くの存在を知りますが このアイテムのような 麻・紙縒り・木綿の三種の糸から織られた布アイテムは、きわめて亜流であると思います。これは、突然変異のごとく生まれたただ一点のアイテムでなく その流れを確実に読み取る為のアイテムの存在によって かろうじて 何らかの伝承の流れがあることを考えます。
そして、そのほかにも紙縒りと麻糸による デンチスタイルのアイテムがあり、これらを比べる時
どちらが本流でどちらが亜流なのか 検証をしなければなりません。
紙縒り糸と 麻糸・木綿糸その他繊維との交織物の流れは、近代にも及ぶものと考えられます。
ではまた