古布 木綿 藍染め 刺し子 Japanese Antique Textile indigo cotton silk thread Sashiko
2022年 08月 16日
現代の収集者にも直ちに理解できる違いを持つSashikoです。
各地方には、歴史の中で打ち破ることのできない(職人には、はみ出すこと自体がわからない)風習、強い縛りそして規範の中に存在するアイテムあります。それらは、同じ地域で伝統的に同じ「形式」を持ったアイテムが、同時期に大量生産されたように残されています。それらは、時代の違いがあっても教え込まれた伝統的風習に従って製作されたアイテムであるため、かなりのアイテムを見た収集家でなくては、その時代的な相違が判りません。
しかし、規範からあふれんばかりにその地の伝承文様を充分に練り上げた背景を持ってはいるが、
そこからはみ出した「異端のSashiko」アイテムは、各地に点在しています。
そして、それらからその時期の日常生活の歴史の一端を知ることができます。
今回の着用Sashikoアイテムは、Sashiko精査に長年かかわってきた経験者が理解できる伝承的背景を持っているが、
注文者の意図(刺し子による装飾性)とは別の視点で使用用途の一部を読み取ることができます。
江戸末期前後、地方庶民が使用できた絹糸は、まだまだ幾分撚りが緩い。そして、同時期の木綿布も、
撚りが緩いアイテムが地方で使用されているようです。
しかし、手で紡がれた繊細な木綿糸を使って織られた木綿布は散見できます。
それは、きめ細やかに織られています。
このアイテムは、細糸で打ち込みよく目の詰まった木綿布(上手織物)が藍で染められています。
拡大画像で木綿布を見ると、手で繊細に紡がれた細い木綿糸が手織りで
布に仕上げられた時期のアイテムであることがわかります。
その布に手間をかけて文様を出すため規則正しく地元の絹糸で刺し子が施されています。
Sahikoは、補強・補修の為に行うアイテムとSashikoで文様を表現するアイテムがあります。
それらは、ほとんどが木綿布に木綿糸でSashikoされたアイテムです。
このアイテムは、Onagosi(女子労働者)のボス仕様と思います。
全体に裏地はなく、内側裏地は、肩周辺のみにとどまっています。通常は、何処でも重ねられた木綿布に木綿糸、
江戸期に近い時代ならまだ麻糸で刺し子されることもあるでしょう。このアイテムの場合 特別な意味を持っています。
そして、絹糸がふんだんにSashiko使用されたアイテムです。
絹糸は、正確に規則正しく文様を表し何回もの洗浄にも耐えられるだけのSashiko技でSashikoされています。
木綿布、絹糸のSashikoそして全体のフォルムが重視されたアイテムです。
Onagosi(女子労働者)のボスが着飾った伝承儀式の際 配下のOnagosi(女子労働者)を監督するため良く目立つように
お揃いのshirusi-hantenの下に着込んだアイテムでしょう。
幕末期、Samuraiの時代から天皇家を中心とした一般庶民の時代となりました。
しかし、手で紡がれた細く丈夫な絹糸は、まだまだ一般庶民にとって高級品の余韻が残る時代のアイテムでした。
現代的に考えれば、かえって一点物の手仕事のSashikoは高い手間賃のかかるアイテムと考えられます。
アイテムは、木綿布全体に空間なくSashikoされています。
当時、彼女は細かい絹糸のSashikoを着ることで儀式場のOnagosiのボスたる威厳を示したのでしょう。
この時代、文様を手軽に表すには繊細なKatazome・Tsutsugaki-染が一層普及していた時代ですが、
この場合、薄手のしっかりした藍染め木綿布に煌く絹糸Sashikoが重要だったと思われます。
女性のしなやかさをそれで強く表現して差別化したかったようです。
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かつて私は庄内地方酒田で織物と間違うような特別に細密な縫いのSashikoを採集しました。
このアイテムは、いかにもOtokosi(男性労働者)のボスが着たであろうと思われるフォルムを持ちます。
これは、所属が襟に染められた分厚く頑丈な長丈着です。袖細く体型にフィットして小動きしやすいアイテムです。
そして、複数の木綿布を重ねて木綿糸で細かく規則正しくSashikoされたアイテムです。
これは、防寒着であり、力仕事によるダメージを減らすアイテムです。
そして、これは ボスの威厳を示すアイテムです。(庄内 酒田)
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今回の絹糸Sashikoアイテムの場合特に力仕事の為に着用した痕跡は在りません。
「えらいさん」(現場でボスの立場の人物)だからOnagosi(女性労働者)を上手く差配して、
Onagosi(女性労働者)集団と同じ現場で、一目でその場のボスと判断するためのSashiko着と思われます。
単衣の木綿布が柔らかい絹糸で「飾りSashiko 」されています。
そのSashiko技術は、熟練の技術でSashikoを生業としている職人の巧みな技と思われます。
短い筒袖は、動きやすいフォルムを持ち 長めの丈がいかにもその場の長を表しているようです。
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そして、身幅の狭い事、ボタン使用時のこのアイテムの首周りの長さ約36㎝(着用者の首周りはさらに小サイズ)、袖口周囲のサイズ25cm、木綿布に絹糸でSashikoしたアイテムこの時代は殆ど見られない事(この絹糸は幕末期頃の撚りの緩い柔らかな地方産の絹糸です)、そしてSashikoの絹糸の煌き具合が女性好みのアイテムを示していると思われます。
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(華奢な仕事の女性用だからSashikoに絹糸を使用しても、絹糸の断裂しそうなダメージは発生しない。)
襟上部の摩滅は、いかにも女性らしい髪油等の洗浄でできた痕跡と思います。胸部あたりの藍染料のわずかな劣化は、
そのあたりが摩滅する仕事を示す痕跡と思われます(背や腹部にほとんど腰結び紐・重荷を持った痕跡がない)。
このアイテムの使用者が首にタオルをかける人のようで、その付近に最も厳しいダメージ摩滅の痕跡が残っています。
しかし、補修されることは、ありませんでした。
女性ボスの遺産は形を変えることなく汚れの洗浄だけで代々のボスに長年大切に使用されました。
そして、その記憶を受け継いだ前時代の人の伝承によって
現代まで伝えられたアイテムと考えます。